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野田村の史跡マップ、点を線に変えるには?※岩手二次日報

野田村観光協会が作成した「野田村歴史巡りマップ」は、縄文時代から近現代に至るまでの約60カ所の石碑や史跡を一枚の地図にまとめたB3サイズのパンフレットです。郷土学習や観光のきっかけとして活用されることを目的とし、代表的な「野田竪穴住居跡群」や「塩の道」、「野田玉川鉱山」などが紹介されています。

一見すると、地元の歴史に触れられる良質な取り組みのように見えます。しかし、正直に言えば、「また地元あるあるの資料マップでしょ」とも感じざるを得ません。というのも、こういった資料は“点”の羅列で終わってしまうことがほとんどだからです。歴史教育と同じで、点だけ提示されても流れがないと興味も湧かず、記憶にも残らない。結果、「ふーん」で終わるのです。

本当に価値ある取り組みに昇華させるには、点を線に、線を面に、面を立体に変える設計が必要です。つまり、個々のスポットをどうつなげて体験できるか、そのストーリー性や巡り方の提示が重要。さらに、地域住民や観光客が自分なりの“ルート”を発見できる仕掛けが欲しい。

もっと根深い問題は、自治体が作ったこの手の資料が“自分たちの資産”として囲い込まれがちな点です。過去には盛岡の都市計画課が、税金で作った素材集を出し渋った事例もありました。「公務員の雇い主は住民だろ?」という基本を忘れているわけです。情報は活用されてこそ意味がある。それを妨げるのが“利権化”です。

研究者や行政が得意な「記録・整理」と、民間が得意な「編集・企画・表現」をうまく掛け合わせる必要があります。そういう意味では、岩手日報がこの情報を取り上げて発信したことは評価できます。ただし、もっと踏み込んでほしかった。「できました」で終わるのではなく、「どう活用できるか」「誰と組みたいのか」「次に何を期待しているのか」まで書いてこそ、情報は生きるのです。

まとめると、今回のマップ自体は良い素材。ただし、単体では“観光振興”にも“郷土学習”にもなりません。そこに魂を入れるのは、住民や事業者、そして外部の知恵との“連携設計”です。その視点があってこそ、ようやく点が線になる。次は「どう活用してもらうか」まで、行政側が語るべき時代です。

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